SolveHRの玉造です。
今回は来月の3月から始まるイスラム教の断食についてご紹介いたします。
インドネシアの方の多くがイスラム教を信仰しており信仰の度合いは人それぞれですが、この断食だけはイスラム教で最も重要な宗教行事とされており、真面目に行う方が多いようです。日本に在留していても断食を行う方が多い印象を受けます。
日本ではあまり馴染みのない宗教行事になりますのでインドネシアの方を雇用されている企業様は是非ご確認いただければと思います。
ラマダンとは
ラマダン(Ramadan)とは、イスラム教徒の五行の一つ「断食」を行う月のことを言います。五行についてはイスラム教の経典コーランに信仰者の義務と記載されています。イスラム教徒の五行は以下のとおりです。
• 信仰の告白(シャハダ):イスラム教に入信・信仰を守ることを誓うこと
• 礼拝(サラート):1日5回を決まった時間に行うこと
• 断食(サウム):1カ月間の断食を行うこと
• 喜捨(ザカート):恵まれない人やモスクなどに施しをすること
• 巡礼(ハッジ):メッカ巡礼。一生に1回、経済的に可能な人のみ
断食をする目的
断食を行う目的としては断食を通じ、様々な欲を抑え、信仰心を深めることや恵まれない人々に思いを馳せ喜捨を行う気持ちを持つためという宗教的・精神的な意味と、1年に1回体のデトックス時期という意味があります。
ラマダンの時期
イスラム教が採用しているイスラム歴(太陰暦)の第9の月の30日間前後とされています。そのためいつも同じ時期に実施されるわけではなく、毎年10日前後早まることになります。
2024年は3月10日からでしたが、今年は3月上旬ぐらいからとなる予定です。いつから断食を開始しレバラン(断食明け大祭)がいつになるかは直前にインドネシア宗教省から発表がありますが、1日~2日ずれる可能性があります。
断食をする時間
1ヶ月の間、全く飲食ができないと思われる方が多いのですがそうではなく、日出から日没までの間のみ飲食をしないというルールです。
断食のルール
以下に該当する方は断食を免除されます。
高齢者・病人・妊婦・授乳中、生理中・旅行中の方
断食をしている途中で体調が悪くなったり、女性の場合生理になってしまったらその日の断食を中断することになります。
ただ、生理中の人や旅行中の人は断食を休んだ日数を次の断食月までの間のどこかで実施する必要があります。
断食期間(時間)中に禁止されていること
あらゆる欲・煩悩を抑えるという意味で、飲食だけでなく喫煙、性行為、悪口を言ったり喧嘩(怒る)も禁止されています。
守れなかった人は断食を中断し他の日に再度断食を行う必要があります。
ラマダンの仕事への影響と注意点
断食時間中の過ごし方
サフール(断食開始前の食事)をとってから出勤時間まで仮眠する人もいますが、通勤に時間がかかる人、会社の勤務開始時間が早まっている場合はそのまま起きている人もいます。
そのため、この時期は睡眠不足になる人も多く休憩時間には仮眠をとったりモスクでお祈りをしてゆっくりと時間を過ごす人が多いです。
業務に支障が出るほどではないとはいえ、空腹や睡眠不足で集中力が落ちることもあります。
ラマダン中の労働環境への影響
1. 断食による体力への影響:ラマダン中は日の出から日没まで飲食を控えるため、エネルギーの不足や脱水症状が懸念されます。
2. 文化的誤解とストレス:ラマダンについて十分な理解がない職場では、以下のような誤解が原因でストレスが生じる場合があります:
・ 断食中の昼食会への参加強制:断食中の労働者が周囲の無理解により、不快な状況に置かれることがあります。
・断食中のパフォーマンスへの誤解:一時的な体力低下を「やる気の欠如」と誤解されることがある。
企業が取る具体的な対応策
・労働環境の調整
ラマダン中は日の出から日没まで飲食を控えるため、体力が低下しやすい状況に配慮が必要です。労働時間やシフトの調整が効果的です。
例えば、エネルギーを消耗しにくい早朝や断食明け後の夕方以降に業務を集中させることで、負担を軽減できます。
・ 食事と栄養のサポート
断食中の従業員が気まずい思いをしないよう、食堂や昼食時間での配慮も必要です。例えば、断食中の従業員のために別の休憩場所を設けるといった柔軟な対応が考えられます。
・文化理解と社内教育
ラマダンに対する理解を深めることは、職場全体の協力体制を強化します。
ラマダンの意義や断食中の注意点について従業員に情報を共有することが効果的です。
また、文化的な誤解を防ぐため、断食中の従業員に昼食会への参加を強制しないよう、社内で意識を高める取り組みも重要です。
・レバラン(断食明け大祭)への対応
ラマダン終了後のレバランは、ムスリムにとって家族や友人と過ごす大切な行事です。
この期間、多くの労働者が休暇を希望します。休暇希望を事前に確認し、シフトを調整することで、スムーズな業務運営を可能にします。
また、日本でレバランを過ごす労働者に向けて、企業が特別なイベントを企画することも、彼らの満足度を高める方法です。
・健康管理と安全対策
断食中はエネルギー不足により体調を崩しやすいため、健康管理が欠かせません。
特に体力仕事を行う労働者には、体調確認を頻繁に行い、必要に応じて医療機関への相談を促すことが重要です。
・コミュニケーションの強化
ラマダン期間中、労働者が直面する課題や希望を丁寧にヒアリングし、個別に対応することが信頼関係を築く鍵となります。
また、ラマダン後には労働者の努力を労い、感謝の意を示すことで、企業への信頼感を向上させることができます。
最後に
弊社では断食を行う支援者に対し、彼らの信仰を尊重したうえで、日本ではインドネシアほど断食に対する環境が整っていないことを説明し、特定技能生として、日本に来ているかぎり仕事に支障きたさない程度に断食を行ってほしいとお願いしております。
日本で働いているインドネシア人の多くが1日の決められた時間に行う5回の礼拝(サラート)を仕事中には行わず、休憩時間や家に帰ってからお祈りをしています。
宗派により異なりますが、インドネシアの方が信仰しているイスラム教は比較的寛容なところが多いです。
今回、初めて日本での断食を行う支援者の方も多いと思います。
弊社としても仕事に影響が出ないよう精一杯サポートさせていただきますが、企業様の方でも注意深く見守っていただければと思います。